海外文学 [僅少本コーナー]

チェーザレ・パヴェーゼ(1908-1950)
イタリアの詩人、作家、文芸評論家。大学卒業後に「文化」誌主筆となり、英米文学の翻訳活動を行う。1935年、反ファシストとして逮捕され、3年の禁固刑を宣告、流刑にされるが、翌36年に不意の恩赦で釈放。1949年に長編処女作『流刑地』を刊行。ファシズムと反ファシズム、孤独と連帯のあいだで常に苦悩する姿勢を示し、苛酷な経験から学んでいく稀有の詩人であった。その神話的物語群は、時代を超え、現代の人間の根源的条件を撃ってやまない。1950年、トリノにて服薬自殺。
チェーザレ・パヴェーゼ全集 ⑤青春の絆
チェーザレ・パヴェーゼ全集
⑤青春の絆
河島英昭訳〔1975年〕
定価1260円 四六判 288頁

裏切られるためだけにしか、ぼくたちの青春はないのだろうか―― 激しい生を求めローマに向かう青年パブロを待っていたのは、ファシストたちの黒シャツと牢獄と、裏切りの酷薄さだった。イタリア解放直後、過ぎ去った青春の崩壊を激烈に描き切った傑作。

チェーザレ・パヴェーゼ全集 ⑨月と篝り火
チェーザレ・パヴェーゼ全集
⑨月と篝り火
河島英昭訳〔1977年〕
定価1260円 四六判 248頁

祭りの夜、月の光を満身に浴びながら、すべては篝り火とともに燃えつきる── ひとりの私生児の彷徨を描き、ファシズムとレジスタンスの時代に斃れた者、生きのびた者の苛酷な運命を「神話」の域にまで高めた、パヴェーゼの遺作。

ベルトルト・ブレヒト(1898-1956)
1898年ドイツ、アウクスブルクの製紙工場主の家庭に生まれる。16歳の頃から詩や評論を書きはじめ、ミュンヘン大学で医学を専攻。ドイツ革命とその挫折の日々を、青春の真只中で生き、処女作『バール』を執筆。1922年に上演された『夜うつ太鼓』でクライスト賞受賞。以後、叙事的演劇の実践を開始し、『三文オペラ』によって全世界の注目を集める。1933年ドイツを脱出、スイス、デンマーク、スウェーデンと移り住む。1948年東ベルリンに帰り、夫人とともに劇団ベルリーナ・アンサンブルを設立し、多くの戯曲、詩、小説、物語、シナリオなどを書く。1956年没。
ブレヒト全書簡
ブレヒト全書簡
野村修訳〔1986年〕
定価8298円  菊判函入 712頁

早熟な少年であった1913年に始まり、劇作家としての成功、地球を一周することになる亡命の日々、そして死の年まで―― 実に43年間にわたって書きつがれた894通の手紙を集成。ベンヤミン、ルカーチら同時代人に宛てた手紙を含む、時代の貴重な記録。

ブレヒト 私の愛人 ――「ライートゥ」は語る
ブレヒト 私の愛人
―「ライートゥ」は語る
ルート・ベアラウ著 好村冨士彦・増本浩子訳〔1989年〕
定価2946円  四六判  448頁

『転換の書/メ・ティ』の恋愛論に出てくる女性「ライートゥ」のモデルであり、最も緊密な同志であったルート・ベアラウが回想するブレヒトとの日々。亡命中のブレヒトと苦楽をともにし、彼とその仕事への愛と協力を貫いた女性の自伝的回想録。

ヴァルター・ベンヤミン(1892-1940)
ベルリン生まれ。ベルリン大学およびフライブルグ大学でブロッホらとともに哲学を専攻。フランクフルト新聞や「文学世界」誌を中心に評論などを書くかたわら、ボードレール、プルーストなどの翻訳に専念。この時期、マルクス主義者としての彼の自己形成はほぼ決定的なものとなった。ホルクハイマー、アドルノ、マルクーゼ、ブレヒトらと親交を結ぶ。1933年ヒトラー政権樹立と共にパリに亡命。1935年ホルクハイマー主宰の「フランクフルト社会科学研究所」に正規の所員として迎えられ、ここに拠って生涯の最も重要な研究活動につく。1940年、パリ陥落のため亡命者の一群に加わってスペインに向う途中、服毒自殺。
ヴァルター・ベンヤミン著作集 ⑤ゲーテ 親和力
ヴァルター・ベンヤミン著作集
⑤ゲーテ 親和力
高木久雄訳 〔1972年〕
定価1631円 四六判 160頁

作品と批評の鮮烈な出会いのなかに「同時代人」ゲーテを生き生きと甦らせた、決意の書。

ヴァルター・ベンヤミン著作集 ⑦文学の危機
ヴァルター・ベンヤミン著作集
⑦文学の危機
高木久雄訳 〔1969年〕
定価1733円 四六判 240頁

過渡期の文学はどのように可能か。プルーストやカフカの作品を論じる屈指の文学的エッセイ。

ヴァルター・ベンヤミン著作集⑧シュルレアリスム
ヴァルター・ベンヤミン著作集
⑧シュルレアリスム
針生一郎訳 〔1981年〕
定価1631円 四六判 192頁

芸術を内側から爆破するシュルレアリスム運動の意味を、共感をもって捉える同時代人の書。

ヴァルター・ベンヤミン著作集 ⑨ブレヒト
ヴァルター・ベンヤミン著作集
⑨ブレヒト
石黒英男訳 〔1971年〕
定価1937円 四六判 240頁

20世紀の芸術の問題を、ブレヒト像を通して歴史と革命のきりむすぶ地点に提示する。

陶酔論
陶酔論
飯吉光夫訳〔1992年〕
定価2548円 四六判 208頁

ハシッシ服用実験、酩酊状態での街の散策…… 1930年前後のヨーロッパ、ベンヤミンは人為的な「陶酔」を通して翳りゆく時代の真の姿を捉えようとしていた。パッサージュ論、アウラ論の礎ともなった精神の彷徨を辿ることのできる貴重な一冊。

ベンヤミンの黒い鞄 亡命の記録
ベンヤミンの黒い鞄
―亡命の記録
リーザ・フィトコ 野村美紀子訳〔1993年〕
定価3975円 四六判 368頁

ナチスから逃れ、新しい土地を求めてピレネーを越えた亡命者たち。その中に、原稿がつまった黒い鞄を大切に抱え、偽造旅券を手にしたベンヤミンの姿があった―― 彼らの山越えの案内人だったユダヤ女性が、冒険小説さながらの日々を鮮やかに回想する。

アドリエンヌ・リッチ(1929-)
アメリカ・ボルティモア生まれ。現代アメリカを代表する女性詩人・フェミニスト批評家。ハーバード大学に学び、60年代半ばから、公民権運動、反戦運動、フェミニズム運動にかかわる。終始アカデミズムの外にいて、自らの経験を深く掘りさげたラディカルな女性論を展開。その論考は女性たちの熱い共感をよび、さまざまな論争をまきおこした。それらは、『嘘、秘密、沈黙。』『血、パン、詩。』『女から生まれる』の3冊にまとめられる。ほか、『難破船に潜る』『時間の力』など十数冊の詩集がある。
アドリエンヌ・リッチ女性論 ①嘘、秘密、沈黙。
アドリエンヌ・リッチ女性論
①嘘、秘密、沈黙。
大島かおり訳〔1989年〕
定価3018円 四六判 552頁

女として生きるとは? 母として、詩人としての自らの体験を深く掘りさげ、母性神話、異性愛、女の教育と仕事についてラディカルに問う。「男の思想」の嘘を撃ち、女の視点から世界を捉えなおす70年代フェミニズム論考の白眉。

アドリエンヌ・リッチ女性論 ③女から生まれる
アドリエンヌ・リッチ女性論
③女から生まれる
大島かおり訳〔1990年〕
定価5040円 四六判 512頁

地球上のあらゆる人間は女性から生まれる―― 妊娠、出産、中絶、子育て…… 自らの体験を問い、今日「母性」が抱えるあらゆる問題を緻密に分析する。新しい古典として世界中でインパクトをもって読みつがれている「母性論」の名著。