本書を貫くのは、かつてドストエフスキーが『カラマーゾフの兄弟』で描いた、人間にとって自由は重荷か、権威の命じるままに生きることが多数者の幸せなのか、という問いかけをめぐる、根源的な思索である。カミュ、李良枝ら植民地主義の落とし子たちの、終わりなき彷徨を見つめる「文学論」と、外国人を排斥する心情の歴史的背景をひもとく「政治論」。二つの角度から現代社会を問いなおし、時代の扉を押しひらく―― 。