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概要

yoshimoto

 ご挨拶 この度、本当に小さなご縁から、父・吉本隆明の全集が刊行される運びとなりました。 たいへんな期待と喜びをもって、このプロジェクトを見守りたいと思っております。 おそらく世界はこれから、精神も含めパラダイム・シフトとも言える変革に遭遇することでしょう。それに伴い人類は、とてつもない難局と対峙することになるでしょう。 『こんな時、吉本ならどう考えるだろう』と思った“おじ様方”あなたは、もう充分に答えを得ているはずです。ぜひこの全集をあなたの書斎に、より“箔”を付ける為の小道具として、あるいは高さ調節自由の昼寝用枕として、全巻ご購入頂くことを希望します。 そして、これから人生に立ち向かって行く、あるいは立ち止まってしまった世代の方々、書店でも図書館でも構いません。興味を覚えた巻から手に取ってみてください。 その時点で、あなたは既に次なる扉の前に立っているのだと、確信しています。刊行にあたって人と社会の核心にある問題へむけて、いつも深く垂鉛をおろして考えつづけてきたのが吉本隆明さんでした。それは、敗戦の衝撃から六〇年安保を経て、七〇年代の地滑り的な社会変動がいまも拡大進行している大衆消費社会の現在にまでおよんでいます。文学と思想の両翼にわたる体系的な思索と力動的な考察は、多様な領域と主題をめぐって精力的になされつづけてきましたが、徹底的に突き詰めるその言説によって、たえずポレミカルな緊張をはらんでいました。その時々の象徴的な論争をはさみながら、共感と反発をたくさん生み出してきましたが、つねに危機の淵にはっきりした足跡を印そうとするその著作の規模と深度は、同時代にひときわ抜きん出たものであったと思われます。轟々たる論理が苛酷に展開される長編の書物においても、さりげない片々たるエッセイにおいても、紛れもなくどこまでも吉本隆明さん自身でありつづけたその著作の集積のすべてを、いまここに「全集」としてまとめ、読者のみなさんにつつしんで提出いたします。           晶文社