ははとははの往復書簡

長島有里枝 山野アンダーソン陽子 著
四六判仮フランス装 210頁
定価:1,870円(本体1,700円)
978-4-7949-7306-1 C0095〔2022年4月〕


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「普通」や「当たり前」が苦しいなら、
とにかく話しませんか?

写真家・長島有里枝とガラス作家・山野アンダーソン陽子による日本とスウェーデンを行き交う往復書簡。

「子育て」をテーマに始まった手紙のやりとりが広がりを見せ、テーマに限らない対話が次々と展開されていく。アーティストとして、コロナ禍の生活、政治について、親との関係性、自然との向き合い方、歳をとること……。 噛み合わなくても、共感できなくても、対話はできる。年齢も住む場所も考えも違う二人が、正直に自分の言葉で対話を重ねていく往復書簡。

「子どもを産む前、わたしは自分のことをもっとずっといい人だと思っていた気がします。それから、自分がこんなにもいろいろと苦手で、『普通』が苦しかったり、うまくできなかったりするとも思っていませんでした」(長島)

「子どもが生まれて、どうにか『普通』をしてあげたいと思うのですが、諦めて見失ってしまった『普通』ってなかなか取り戻せないものですね。ましてや、私の住んでいる地域はストックホルムの中でもとりわけリベラルで、かなり自由な社会ということもあり、『普通』が何なのか本当によくわからなくなります」(山野)

「法律とか社会ルール的には、親が与え子どもは受け取るという関係性が良しとされている気がするけれど、人対人と考えれば、与えるだけ、頼るだけなんていう関係性はありえないと思う」(長島)

「ちなみに、家事と育児はまったくの別物なので、産休・育休を取っているからといって、家事を全部しなくてはいけないなんてまったくないです。家事はもれなくみんなについてきます」(山野)

「社会や自分自身のなかには、矛盾するいくつもの考えや気持ちが存在するということ、矛盾を排除して、たったひとつの絶対的にパワフルな正しい物語を導き出すことに対して、警戒心がある、という感じです」(長島)

「未来を思う時、そこがどうか平和であって欲しいですね。スウェーデンでは今年から2010年に廃止した徴兵制を8年ぶりに再開しました。(…)それでも、何かポジティブに捉えることのできないものがあります。もうすぐ選挙です」(山野)

「チャリティでさえ『イメージ戦略』かもしれないようなご時世に、無償で人に奉仕することを自分に納得させる“ポストモダン風の”価値観って、どんなものがあると思いますか?」(長島)

「民主主義は多数決ではないのに、マイノリティの文化や社会の価値観を消し去ってしまうのはどうなのでしょうね?」(山野)

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【目次】

往復書簡I(2018.01.31~2018.12.18)
往復書簡II(2021.05.07~2022.01.30)
対談

 

◇長島有里枝(ながしま・ゆりえ)
東京都生まれ。1993年、武蔵野美術大学在学中に「アーバナート#2」でパルコ賞受賞。1999年、カリフォルニア芸術大学ファインアート科写真専攻修了。2001 年、写真集『Pastime Paradise』(マドラ出版)で第26回木村伊兵衛写真賞受賞。2010年、短編集『背中の記憶』(講談社)で第26回講談社エッセイ賞受賞。2020年、第36回写真の町東川賞国内作家賞受賞。2015年、武蔵大学人文科学研究科前期博士課程修了。主な個展に「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(東京都写真美術館、2017年)、「知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」(横浜市民ギャラリーあざみ野、2019年)など。日常で感じる違和感を手がかりに、他者や自分との関係性を掘り下げる作品を制作する。
◇山野アンダーソン陽子(やまの・アンダーソン・ようこ)
1978年、日本生まれ。ガラス作家。食器デザイナー。2001年よりガラス産業のメッカでもある南スウェーデンのスモーランド地方、フィンランド、ベネチアにてガラス製作技術を学ぶ。2004年、Konstfack(国立美術工芸デザイン大学)セラミック・ガラス科修士課程在学を機にストックホルムに拠点を移し、現在グスタブスベリにアトリエを構え、ガラス制作の活動の場としている。2011年、ストックホルム市より文化賞授与。2014年、スウェーデン議会が作品を貯蔵。EUのみならず、イギリス、セルビア、日本などでも作品を発表し、ライフワーク「Glass Tableware in Still Life」の活動にてガラス食器のあり方を多方面から表現思考する。
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