自滅帳

春日武彦 著
四六判並製 376頁
定価:2,090円(本体1,900円)
978-4-7949-8015-1 C0095 〔2025年9月12日発売予定〕


アマゾンで購入する
楽天ブックスで購入する
セブンネットで購入する

 

精神科医・春日武彦が描く、
「自滅」をテーマにした13篇の文学案内

人はなぜ自滅するのか。「死の欲動」が暗躍する闇世界に、なぜ引き摺り込まれ、沈みゆくのか──。精神科医・春日武彦が描く、「自滅」をテーマにした13篇の文学案内。海外編7作、日本編6作を取り上げ、破滅へ傾く人物たちの姿を描いていく。紹介作品は、パトリシア・ハイスミス、ジョン・チーヴァー、デルフィーヌ・ド・ヴィガのほか、吉行淳之介、林芙美子、松本清張らの短篇も含まれ、名作もあれば、忘れられた小品もある。これら作品の自滅者たちを紹介しつつ、著者自身の記憶や妄想が交錯する断章を織り交ぜて、読者をほの暗い精神の深淵に引きずり込む。好評既刊『自殺帳』の姉妹編とも言うべき内容。

“わたしは今までの人生で、自滅していく人たちを案外沢山目にしてきたような気がする。彼らは自暴自棄に陥っていたり、ふて腐れた挙げ句のセルフネグレクト的な生き方であったり、チープな「滅びの美学」に酔っていたり、緩慢な(あるいは生煮えの)自殺であったり、罪悪感の清算であったり、傲慢であったがための必然的な報いであったり、怠惰と自己欺瞞の結果そのものであったり、世間知らずゆえの悪因悪果であったり等々、さまざまな経緯から自滅へと到達していた。ではそのときに彼らはどのような心持ちであったのだろうか。”(「はじめに」より)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【目次】

はじめに

01 淫景 松本清張『断崖』

02 満ち足りた生活 デルフィーヌ・ド・ヴィガン『子供が王様』

03 いじましい人 吉行淳之介『痴』

04 束の間の救い パトリシア・ハイスミス『手持ちの鳥』

05 トランジスターグラマー 林芙美子『牛肉』

06 死に際して思い返す景色 ウィリアム・トレヴァー『ピアノ調律師の妻たち』

07 なめるなよ 笠原淳『サイモンの塔』

08 異物 H・E・ベイツ『愛ならぬ愛』

09 不死の人 丹羽文雄『虚実』

10 はたらくこども アレクサンダー・マクラウド『ループ』

11 隻脚の画家 有馬頼義『小隊長、前へ』

12 蟹っぽい ジョン・チーヴァー『ライソン夫妻の秘密』

付録 犀を贈る トム・フランクリン『ダイノソア』

おわりに

 

◇春日武彦(かすが・たけひこ)
1951(昭和26)年、京都府生まれ。日本医科大学卒業。医学博士。産婦人科医を経て精神科医に。都立中部総合精神保健福祉センター、都立松沢病院精神科部長、都立墨東病院精神科部長などを経て現在は成仁病院名誉院長。甲殻類恐怖症。猫好き。著書に『臨床の詩学』『病んだ家族、散乱した室内』(医学書院)、『恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで』(中公新書)、『無意味なものと不気味なもの』(中公文庫)、『鬱屈精神科医、占いにすがる』『奇想版 精神医学事典』『屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理』(河出文庫)、『自殺帳』(晶文社)等多数。