魔法少女はなぜ世界を救えなかったのか?

ペク・ソルフィ、ホン・スミン 著 渡辺麻土香 訳
四六判並製 192頁
定価:1,980円(本体1,800円)
978-4-7949-7394-8 C0036〔2023年11月〕


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魔法戦士に変身して戦う姿は
少女に自信を与えるのか、
それともミニスカートにハイヒール姿の
性役割を植えつけるのか?

少女文化コンテンツがもつ二面性への問いを発端とし、ディズニープリンセス、おもちゃ、外遊び、ゲーム、魔法少女アニメ、文学、K-POPアイドルまで、子どもたちが触れるコンテンツが内包するジレンマ、問題点を洗い出す。

【本書より】

性差を必要以上に強調し、男の子なら、女の子ならこれを欲しがるのが普通だと社会的な暗示をかける行為は、結果として子どもを含む消費者に、自分は自発的に商品を選んでいるという錯覚を起こさせます。自分は女の子だからこの商品を買うように「誘導された」のではなく、自分は女の子だからこの商品を好むのは「当然」だと感じさせるのです。(「第3章」より)

市場フェミニズムとは簡単にいうと、市場が見せる「大衆ウケする」女性主義的なメッセージのことです。家父長制を直接攻撃することなく、資本主義を含む現在の体制には背かないところで、個人的な成功や権力の向上、自律性にフォーカスする。分かりやすくシンプルで、気遣いの感じられるソフトなフェミニズム―それこそが、大衆親和的な市場フェミニズムの特徴です。(「第8章」より)

初めて『プリキュア』を見た時の衝撃は、今でも忘れられません。初めて『セーラームーン』を見た時とは全く違う種類の衝撃でした。主人公たちがキラキラした魔法ではなく、自ら体を張って敵と戦っていたからです。(第9章」より)

「パスニ」という蔑称で呼ばれた少女ファンたちは、大衆文化を享有するどころか大衆を代表することもできない存在とされてきました。彼女たちの審美眼や評価能力は、何の価値もない単なる欲目だと見下されてきたのです。(「第13章」より)

女性アイドルたちがデビューを前に極端なダイエットをすることは、すでに広く知られた話です。「スリムな体」が女性アイドルになるための必須条件だという事実を知らない人はいません。(「第14章」より)

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【目次】

第1章 ディズニーは、どうやってプリンセスブランドを復活させたのか?
第2章 外は危険、ディズニーから離れないで
第3章 女の子は人形を、男の子はアクションフィギュアを本能的に求めるのか?
第4章 子どもには思う存分遊ばせよ!
第5章 ゲーム業界、どうしようもないと思っていたら間違いでした
第6章 魔法の国からやってきたサリーのパラドックス
第7章 魔法少女アニメが衰退した理由
第8章 セーラームーンはなぜ世界を救えなかったのか?
第9章 魔法少女アニメはおもちゃのカタログ?
第10章 すべての文学は少女から始まった
第11章 私らしくいられない世の中で「児童書」として生き残る
第12章 文学界、少女ヒーローの裏に隠された性差別の陰
第13章 アイドル「パスニ(追っかけ)」、「ファンフィクション(二次創作)」、「ホームマスター(ファンサイトの管理人)」、それぞれの推し活
第14章 白状します、女性アイドルを見るたびに申し訳なくなる理由を
第15章 少女は幻想を満たす存在ではなく、人間です!

 

◇ペク・ソルフィ
気付けば7年目を迎える編集者。現在までの自分を作り上げ、未来の女児たちを作っていく少女文化に強い関心を持つ。人文学コミュニティ「イウム」が発行するウェブマガジン「CONNECT」の編集員。パク・ポクスンアというペンネームで小説の執筆も行っているほか、「IZE」「ビュー」などにも寄稿している。
◇ホン・スミン
児童文化・消費文化を専攻する大学院生。埼玉大学にて論文「東映魔法少女アニメーション50年史」を執筆し、修士学位を取得。現在はオーストラリアのシドニー大学にて博士課程を受けている。
◇渡辺麻土香(わたなべ・まどか)
韓日翻訳者。訳書にキム・ヨンソプ『アンコンタクト 非接触の経済学』(小学館)、ハン・ミファ『韓国の「街の本屋」の生存探究』(クオン)、オリガ・グレベンニク『戦争日記 : 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』(河出書房新社)、ソン・ウォンピョン『威風堂々キツネの尻尾』(永岡書店)などがある。
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